2021年5月12日 日比谷中田 M&Aニュースレター Vol.17 (2021年5月号)
2021年5月12日(水)、日比谷中田 M&Aニュースレター Vol.17 (2021年5月号)を配信いたしました。
---- 目次 ----
1. お知らせ
2. 当事務所の最近の関与案件
3. 最新トピック「表明保証保険(文責 関口尊成)」
4. 所属弁護士の趣味紹介「リモートワークとガジェット趣味(文責 副田達也)」
1. お知らせ
■ 当事務所の弁護士によるセミナー情報をご案内します。
◆ テーマ:「企業買収時のPMIの多様化~「オペレーション開始型」「リスク対応型」「課題解消型」等~」
● 主催:企業研究会
● 講師:中田順夫 弁護士
● 日時:2021年5月25日(火) 14:00~17:00
● 会場:企業研究会セミナールーム
(東京都台東区東上野1-13-7 ハナブサビル)
*本セミナーは会場受講、オンラインライブ受講のいずれかでご応募いただけます
【会場】 https://form.bri.or.jp/public/seminar/view/15733
【オンライン】 https://form.bri.or.jp/public/seminar/view/15734
◆ テーマ:「国内・海外におけるM&A、表明保証保険の実務~『M&A保険入門』の著者が実務の勘所を徹底解説~」
● 主催:企業研究会
● 講師:関口尊成 弁護士
● 日時:2021年5月27日(木) 14:00~16:30
● 会場:企業研究会セミナールーム
(東京都台東区東上野1-13-7 ハナブサビル)
https://form.bri.or.jp/public/seminar/view/15804
◆ テーマ:「事業会社による国内・海外でのベンチャー出資の実務」
● 主催:企業研究会
● 講師:関口尊成 弁護士
● 日時:2021年6月16日(水) 14:00~16:30
● 会場:企業研究会セミナールーム もしくは Webinar開催
(東京都台東区東上野1-13-7 ハナブサビル)
*後日当事務所HPで申込詳細をご案内します
◆ テーマ:「表明保証保険を利用した戦略的ディール管理~国内でどのように使いこなせば良いのか、実践的に~」
● 主催:金融財務研究会
● 講師:関口尊成 弁護士
● 日時:2021年7月2日(金) 10:00~12:00
*本セミナーはオンライン会議システム「Zoom」で開催します
https://www.kinyu.co.jp/seminar_detail/?sc=k211231
◆ テーマ:「事業承継M&Aを円滑に行うための表明保証保険の基礎知識-金融機関として知っておきたい一手法-」
● 主催:FNコミュニケーションズ
● 講師:和田倉門法律事務所 山本啓太 パートナー弁護士
関口尊成 弁護士
● 日時:2021年7月9日(金) 13:30~16:30
*本セミナーは会場受講、オンラインライブ受講、後日動画視聴のいずれかでご応募いただけます
https://www.fngseminar.jp/seminar/index.php?p=entry&num=4599&ot=
2. 当事務所の最近の関与案件
■ GCAアドバイザーズ株式会社によるM Coの60%株式の同社への売却について、中田順夫、関口尊成の各弁護士がGCAアドバイザーズ株式会社のカウンセルを務めました。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2174/tdnet/1944854/00.pdf
■ UTグループ株式会社による株式会社プログレスグループの株式取得について、井上俊介、太田香の各弁護士がUTグループ株式会社のカウンセルを務めました。
https://www.ut-g.co.jp/id3neq81fx/wp-content/uploads/2021/04/release_210423.pdf
■ JUKI株式会社とペガサスミシン製造株式会社の事業提携基本契約の締結について、副田達也、井上俊介の各弁護士がJUKI株式会社のカウンセルを務めました。
https://www.juki.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/04/210426.pdf
■ Sika AGによる横浜ゴム株式会社のハマタイト事業の譲受けについて、水落一隆、井上俊介、太田香の各弁護士がSika AGのカウンセルを務めました。
https://www.y-yokohama.com/release/?id=3572&lang=jp
現在継続中のM&A/JV案件として、アメリカ1件、ドイツ1件、イタリア1件、フランス1件、中国3件、香港1件、タイ1件、インドネシア1件、フィリピン2件、シンガポール3件、ベトナム1件、トルコ1件、コロンビア1件、グローバル2件、国内 9件など、多数進行中です。
3. 最新トピック「表明保証保険(文責 関口尊成)」
1.沿革
表明保証保険は、2000年以降、欧米において活発に利用され始め、現在ではアジアを含む世界中で利用されています。こうした動きに反し、日本の国内案件については、ほとんど利用されてきませんでした。
日本企業が表明保証保険に触れるのは、海外企業を買収する場面が主だったと思います。売主であるPrivate Equity(PE)ファンドによるオークション(入札)による、海外会社の買収案件で、PEファンドから、「株式譲渡契約上の表明保証違反が生じた場合でも、売主に故意や詐欺的行為が無い限り、買主から売主への補償請求はできず、買主は、表明保証保険からのみ補償を受けること」を約束させられるといったケースが典型的なケースです。こうしたケースでは、表明保証保険を付保せざるを得ませんので、多くの日本企業は、このような場面になってようやく同保険を真剣に検討したというのが実態だったのではないかと思います。
2.2020年以降
2020年以降、日本の損害保険会社が、国内M&A取引向けの表明保証保険に注力し始めました。このため、最近になって、「表明保証保険」という言葉を聞く機会が増えたはずです。この取組みが革新的なのは、保険を引き受ける際の審査が全て日本語で行われるという点です。以前は、国内M&Aへの付保であっても、引受審査は基本的に英語で行われていました。そのため、株式譲渡契約書やデュー・ディリジェンス・レポートの英訳が求められましたし、アンダーライティング・コールと呼ばれる損害保険会社からのインタビューも英語で行われていました。この結果、国内M&Aであるにもかかわらず、保険を付保するために、わざわざ文書を英語に翻訳する等、手間と費用がかかることになり、これが表明保証保険の普及を大きく妨げていました。
こうした実務の背景として、日本の損害保険会社が保険引受けをした場合でも、保険リスクの大部分が海外の損害保険会社に(再保険に出されることで)移転されていたという事実があげられます。そのような再保険の効果として、日本の損害保険会社は、保険事故(表明保証違反)が起きたときに、被保険者に対し保険金を支払わなければなりませんが、同時に、再保険会社から保険金を受領できます。当該アレンジ(保険リスクの大部分が海外の再保険会社により引き受けられている)の下、保険の実質的なリスクを引き受ける海外の再保険会社によって表明保証保険の引受審査が行われることが多かったと思います。これにより、国内M&A向けの表明保証保険のための引受審査でありながら、英語で審査されるという現象が生じていました。
しかし、国内の損害保険会社(数社)が保険リスクの自社での引受け部分を拡大すること等の努力により、2020年以降になってようやく、国内M&Aのための表明保証保険の付保について、海外の再保険会社に依存せず、日本語のみでの引受審査を行う土壌が整ってきました。
3.国内M&A案件でどのように利用されるのか
プレスリリース等の公表情報によると、これらの国内の損害保険会社(数社)は、特に国内の事業承継M&Aでの利用を期待しているようであり、この分野での利用が進むことが予想されます。事業承継M&Aの場合、個人オーナーから株式を譲り受けるケースが多いと思いますが、個人オーナーは、(一般の方には異常なほど重厚長大にも見える)表明保証にはなじみがなく、これが案件の障害になることもあります。このようなときに、表明保証保険を用いることで、表明保証違反リスクを保険会社に移転させることができれば、売主も安心し、案件をスムーズに進めることができます。
個人的には、表明保証保険の普及の鍵は、PEファンドやフィナンシャル・アドバイザー(FA)が握っていると思っています。欧米案件では必須のツールとなった表明保証保険ですが、これほど普及したのは、PEファンドやFAによる積極的な利用(特に入札案件での利用)がなされてきたからです。たとえば、セルサイドでは、「買主が表明保証保険を購入し、表明保証違反に基づく補償請求は表明保証保険で処理してもらうこと」を入札条件することで、売主のクリーン・イグジットを実現しようとします。他方、バイサイドでは、そのような要求が売主からなされていない入札案件で、買主が自ら表明保証保険を購入し、売主の表明保証違反のリスクを減少させることを提案することで売主を安心させ、自らを選定してもらうよう、売主にアピールすることもあります。
このように、表明保証保険を使いこなせれば、M&Aにおける交渉を優位に進められる可能性が高まるため、日本でも、PEファンドやFAも表明保証保険の習熟へのプレッシャーが次第に強くなっていくことが予期されます。そのような競争環境の中で、欧米と同様、オークション案件を中心として、表明保証保険を戦略的に使いこなせるPEファンドやFAがより多く出現することで、表明保証保険は益々普及していくはずです。
最後に、表明保証保険の普及に欠かせないプレイヤーとして、保険ブローカーがあげられます。表明保証保険は、通常、保険ブローカーをリテインした上、保険ブローカーが取得する複数の保険会社からの見積もりを比較検討して、保険会社を選定されます。このように、保険購入者と直接コンタクトする保険ブローカーが、表明保証保険をいかに啓蒙できるかも、表明保証保険の発展に重要です。
保険ブローカーとしては、表明保証保険の形式的な繋ぎに終始するのではなく、具体的なM&Aプロセスの中で表明保証保険をどう落とし込めば良いのかをパッケージで説明できると、より魅力的なマーケティングになるのではないでしょうか。たとえば、入札との関連であれば、セラーズ・ノン・リコースを実現するため、プロセスレター、株式譲渡契約でどのような記載をすべきなのかなど、弁護士法に違反しない限度で(違反するおそれがある場合には詳しい弁護士と協働して)、説明することもあり得ます。
4. 書籍、セミナー等
以上の通り、日本における表明保証保険の発展に大いに期待しており、ぜひ貢献したいと考えております。その一環として、書籍、セミナー等の情報発信を行っており、以下に一例を挙げさせていただきます。参考になれば幸いです。
「M&A保険入門」編集部おすすめの1冊 - M&A Online - M&Aをもっと身近に。
https://maonline.jp/articles/book141
開催セミナー詳細 金融財務研究会・経営調査研究会 (kinyu.co.jp)
https://www.kinyu.co.jp/seminar_detail/?sc=k211231
【会場】国内・海外におけるM&A、表明保証保険の実務 - 企業研究会 (bri.or.jp)
https://form.bri.or.jp/public/seminar/view/15804
【オンライン】国内・海外におけるM&A、表明保証保険の実務 - 企業研究会 (bri.or.jp)
https://form.bri.or.jp/public/seminar/view/14994
4. 所属弁護士の趣味紹介「リモートワークとガジェット趣味(文責 副田達也)」
純粋な意味での趣味とは少し違うのかもしれませんが、ガジェットが好きです。ガジェットといってもラジコンや無線といった本格的な趣味のものではなく、あくまでも実用的な、最新の電子機器、具体的にはiPhoneやiPadなどのアップル製品や、様々なイヤホン/ヘッドホン、スタイラスペンなどを、最新のものを買ってみては仕事に使ってみる、というのを昔からやっていました。結果として本当に仕事に使えるようなガジェットは一握りで、購入したガジェットたちの大部分は自己満足に終わるのですが、これは私にとっては趣味ですので、後悔はありません。
そんな私にとって、今回のコロナ禍によるリモートワーク推進という社会状況は、これまでに買い集めた数々のガジェットの真の力を発揮させる、絶好の機会でした。昨年にリモートワークが推奨され始めるより前の時期から、いろいろとガジェットを取り出しては試行錯誤を繰り返してみましたので、今回は特に主だった機器に限定して、私なりの使用例と感想(のほんの一部)を紹介したいと思います。
M&A業務とリモートワーク
当事務所が提供しているような企業法務、その中でもとりわけM&Aなどの渉外業務は、リモートワークととても親和性があります。もちろん、クライアントとの最初の顔合わせや相手方との重要な交渉局面、重要な取引のクロージングなど、可能な限り現場に臨場して行うべき業務もあるのですが、これらは(いずれもとても重要ではあるものの)割合としては実際の業務時間全体のごく一部でして、ほとんどの業務時間は書類の作成、レビュー、修正、リサーチなど、いわゆるドキュメンテーション業務で占められます。
また、M&A業務を実施するにあたり、秘密保持は決定的に重要です。様々なガジェットが、外出先のカフェや移動中の電車内などで業務が便利に行えることを売りにしているのですが、M&A業務としては、周囲に人がいるようなカフェから重要な会議に参加して発言することや、電車内の隣に客がいる座席で重要な書類を広げてドキュメンテーションを行うというのは(実際の周囲の状況にもよりますが)なかなか難しいのが実態です。
従って、弁護士業務としてのM&A業務においてリモートワークを行うための要件は、第一に作業内容はドキュメンテーションであり、第二に作業場所は自宅(又はシェアオフィスの個室などのプライバシーが確保された環境)となります。
iPad Proとアップルペンシル
リモートワークでもっとも活躍しているのは、iPad Proとアップルペンシルです。ガジェットを趣味にしているにもかかわらず恥ずかしいのですが、私は契約書やDDレポートなどを本格的にレビューするときは、パソコンのモニターに表示してスクロールするだけでは集中しきれず、紙に印刷して手書きでチェックやコメントを入れながらレビューをしなければできませんでした。しかし、自宅で100ページ以上の契約書や、場合によっては数千ページにもなりうる大量のDD資料を毎回印刷するのは大変ですし、レビュー後の書類はそのままでは廃棄できず、シュレッダーにかけるなどの処理をしなければならないので、自宅でこれをやるのはさらに大変になります。そこで、私はレビュー対象となる書類をPDF化し、iPadに表示させてアップルペンシルで手書きを入れながらレビューをするスタイルで作業をしています。最初は感覚の違いに戸惑いましたが、現在では紙でのレビューと変わらない感覚でのレビューができるようになっています。このスタイルですとレビューした書類やノートが散逸することもありませんし、どれだけPDF化してもかさばらないので、とても気に入っています。
手書きノートアプリは、いろいろなアプリを使ってみた結果として、もっとも書き味がしっくりきたGood Note 5を使っています。アップルペンシルではなく別のメーカーの(より安価な)スタイラスペンを試したこともありますが、文字を書くときにほんの少しでも遅延が発生してしまうと作業に集中できなくなってしまいますので、要注意です。
なお、iPad Proとしては11インチが一般的ですが、より大きなサイズの12.9インチを使うのも一手だと思います。このサイズは大きすぎて携帯性はありませんが、自宅で使う分には問題ありませんし、12.9インチですとA4サイズの書類をほぼそのままのサイズで表示できるので、書類レビューの効率はさらに上がります。
ビデオ会議への参加デバイス
Zoom会議やTeams会議などで活躍しているのは、完全ワイヤレスの独立型イヤホンと、マイク付きのワイヤレススピーカー、そして外付け式のカメラです。独立型イヤホンは業務用としては接続の安定性と低遅延であることが重要ですが、私はJabra Eliteという製品を使っています。これはBluetooth接続が安定していることに加えて一つのイヤホンで同時に二つのデバイスで待ち受けするマルチポイント機能が搭載されていますので、例えばデスクトップPCで使ってから、後で外出用ノートPCで使うときにBluetoothを接続しなおす必要がないのが気に入っています。ただし、マルチポイント機能を同時並行的に複数のデバイスで使おうとすると、ビデオ会議ツールによっては設備を認識してくれないことがありますので、複数のデバイスで同時並行的に使うときは、片方だけに接続しておく(もう片方のデバイスには別のイヤホンを用意する)方が無難です。
ワイヤレススピーカーはBoseのSoundlink Revolveを使っています。イヤホンで長時間の会議に参加しているとどうしても耳が疲れてしまうので、会議の合間などに、スピーカーに切り替えて耳を休ませながら使用しています。当然、部屋中に会議の音声は響き渡りますが、自宅ですので問題ありません。難点としてはときどき愛犬の吠え声などを拾ってしまうことくらいでしょうか。
なお、AppleのAirPods Proは携帯での通話用に使っています。iPhoneとの接続の安定性は素晴らしいですが、PC用としては接続の切り替えの手間がかかるので、PCでのZoomやTeamsには使っていません。ノイズキャンセリング機能も優秀なのですが、自宅で業務に使うにはあまり関係ありません。
外付けカメラはエレコムのUSB接続のWEBカメラを使っています。ノートパソコンに内蔵されているカメラでも問題はないのですが、外付けカメラを好きな位置に固定して、毎回同じアングルでビデオ会議に参加することに決めてしまうのが(個人的に)もっともストレスがありませんでした。
なお、弁護士業務の中でビデオ会議に参加する場合、使用するビデオ会議ツール(ZoomやTeamsなど)はクライアント、FA、相手方などから指定されるのが通常です。そのため、特定のツールでしか使えないような機器は使い勝手が悪いので、弁護士としてはできるだけ汎用性が高いものを選ばなければなりません。一部のツールは外付けのデバイスを認識してくれないこともありますので、初めてのツールを使う際には事前に接続テストを行う必要があります。
リモートワーク向けの新しいガジェットは日々発売されます。コロナ禍がいつ収束するのか予断を許しませんが、厳しい状況でもそれをむしろ楽しみながら業務につなげられるよう、今後もガジェットを業務に活かす研究を続けていこうと思っています。
以上
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