お知らせ

出版/寄稿
・井上俊介弁護士のコメントが、日本経済新聞(2025年8月8日付電子版・11日付朝刊)に掲載されました。
・関口尊成弁護士が執筆した「非上場会社の買収における日英の実務比較」がM&A専門誌マール2025年8月号(370号)に掲載されました。

事務所主催セミナー
『海外事業売却・カーブアウト案件、成功のための実務』
【開催日時】2025年8月27日(水) 13:00~14:30
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【申込締切】2025年8月26日(火) 12:00まで
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】Webinarに申し込む

『海外・国内の新興企業・ベンチャー企業への出資』
【開催日時】2025年9月24日(水) 13:00~14:00
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士、中井直子 弁護士
【申込】近日HPで案内予定

『日本の上場会社M&Aの最新トピック』
【開催日時】2025年10月29日(水) 13:00~14:30
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士、辻裏光希 弁護士
【申込】近日HPで案内予定

最近の関与案件

ウシオ電機株式会社によるオーストリアのams- OSRAMグループからの、ドイツをはじめとする世界20数ヶ国にわたるentertainment & industrial lamp事業のカーブアウト一株買収案件について、中田順夫、井上俊介、中井直子、山崎真理、春山莉沙の各弁護士がウシオ電機株式会社のカウンセルを務めました。
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株式会社カラダノートと住友生命保険相互会社の資本業務提携について、井上俊介、春山莉沙の各弁護士が株式会社カラダノートのカウンセルを務めました。
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東海カーボン株式会社による株式会社ブリヂストンからのBRIDGESTONE CARBON BLACK(THAILAND) CO.,LTD.の株式取得について、関口尊成、木下美希、名古屋秀幸、春山莉沙、栗崎雅也の各弁護士が東海カーボン株式会社のカウンセルを務めました。
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朝日生命保険相互会社によるほけんの窓口グループ株式会社への株式会社F.L.Pの株式譲渡について、関口尊成、名古屋秀幸の各弁護士が朝日生命保険相互会社のカウンセルを務めました。
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株式会社ジョイフル本田への株式会社本田の株式譲渡について、関口尊成、春山莉沙、栗崎雅也の各弁護士が株式会社本田のカウンセルを務めました。
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現在継続中のM&A/JV案件 アメリカ3件、イギリス1件、メキシコ1件、中国4件、タイ2件、インドネシア1件、シンガポール1件、ベトナム2件、台湾3件、グローバル1件、国内28件など多数進行中。


最新トピック

『英国ディールとタックスコベナンツ』
文責 関口尊成


英国でのM&A実務は、デューディリジェンス(DD)、SPA(株式譲渡契約)、課税(印紙税)、取締役の居住要件、表明保証保険等に関し、日本と異なる取扱いがなされることがあります。

そうした異なる取扱いについて、「非上場会社の買収における日英の実務比較」としてMARR Online 2025年8月号で整理したところ、同論考で取り上げたいくつかの項目のうち、タックスコベナンツ(tax covenant)に焦点をあてて、解説します。

タックスコベナンツとは、売買実行時点において、対象会社の税務債務を本来あるべき姿で買主および売主に割り当てることを目的とする仕組みです。タックスコベナンツは、対象会社に関する売主の表明保証とは異なる目的で規定されるものであり、対象会社に関する売主の表明保証とは別に規定されます。

こうしたタックスコベナンツを理解するにあたり、以下のような、英国の取引におけるいくつかの概念を理解しておくことが有用です。
(1)対象会社に関する売主の表明保証(warranties):表明保証は、端的には、対象会社が一定の性能を有することを売主が保証するものです。言い換えれば、原則として対象会社が満たすべき買主の期待する条件を規定するものであり、買主が把握していないリスクをカバーすることを目的とします。表明保証違反の場合には、通常の契約違反の理論にしたがって、表明保証により買主に生じた損害の賠償が認められることになります。
(2)売主による補償(indemnities):売主の表明保証は、買主が把握している瑕疵は対象から除外され、買主がかかる瑕疵によるリスクについて救済を求める場合には、売主による補償が用いられます(日本では「特別補償」と呼ばれます)。この補償では、一定の事象が生じた場合に、一定の金銭を支払うことを約します。たとえば、対象会社に対する訴訟が係属している場合において、「当該訴訟において対象会社が支払命令を受けた場合には、支払命令の額と同額を売主から買主に対して支払う」といった補償規定を置きます。
(3)分配(apportionments):分配は、一定の事象に関して一方当事者から他方当事者に対して金銭の支払いをすることを約束するという点で、表明保証や補償と似ているものの、カバーする対象が異なります。たとえば、資産譲渡の場面において、建物のリースが買主に移転されることを想定します。建物の賃料は、1月1日から1年分前払いされていて、資産譲渡日が6月30日であるとすると、買主は、資産譲渡の時点から12月31日まで、無償で建物を使えることになります。本来は、買主は、6月30日から12月31日までの賃料を負担すべきですから、買主から売主に対して、当該期間の賃料相当額を支払うべきこととなります。こうした負担の配分を分配と呼びます。

タックスコベナンツは、上記の分類における「分配」に近いものであることが多いです。ただし、税務リスクが判明している場合には、「売主による補償」に相当する内容も含まれることになります。

タックスコベナンツの典型例として「売主は、売買実行の前に生じた事情によって対象会社によって生じた税務債務と同額を買主に対して支払う」という内容が挙げられます。このような税務債務が生じる可能性があること自体は瑕疵ではなく、税務上の表明保証の対象にはなりませんが、相当する収益が売主に帰属したのであれば、税務債務の負担も売主に課すのが公平であることから、分配の考え方で調整するものです。

なお、抽象的にはタックスコベナンツの対象になるものでも、売買価格にすでに織り込まれているものは除外されます。たとえば、「売主は、売買実行の前に生じた事情によって対象会社によって生じた税務債務」であっても、売買価格算定の根拠となった貸借対照表上ですでに債務として認識されているものは除外されます。また、ロックドボックスの取引では、売買実行前の事情によって生じた税務債務であっても通常の事業活動によって生じたものは除外されます。これは、ロックドボックスの取引では、基準時以降の対象会社の損益は買主に帰属することを前提とするためです。

日本では、①過去の税務申告書が問題なく提出され、②当該申告書に基づき(また申告納税でない賦課徴収方式については税務当局の課税額の決定に従い)税金が滞納なく支払われていること、③(当該申告書・納税について)税務当局との見解相違がないことを主に想定して、表明保証や特別補償が規定されていることが少なくありません。これに対し、タックスコベナンツは、上記①乃至③に加えて、売買実行の前における対象会社の事情(たとえば、売買実行前の不動産取引によって得た売却益)に紐づいて同社に生じた税務債務であれば、売主が買主に補償するという設計であるため、日本の表明保証や特別補償よりも買主の保護が手厚くなるといえます。

なお、タックスコベナンツは、SPAの別紙として入れるやり方とタックスコベナンツをSPAとは別書面に規定するやり方があるが、効果に差はなく、好みの問題です。タックスコベナンツを別書面にする場合、この書面を一般にTax Deedと呼んでいます。


趣味紹介

『大阪夢洲』
文責 栗崎雅也


この場を借りてご挨拶させていただきます。2025年4月に入所した栗崎雅也です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、最近は、家族を外に連れ出すためのちょっとした遠出が趣味になりつつあるのですが、先日は家族を連れて大阪・関西万博に行ってきました。閉幕まで残り2か月を切っていますが、関東圏からだとなかなか気軽には行けないので、まだ行かれていない方もいらっしゃるかもしれません。私はあまり期待していなかったのですが、実際に足を運んでみると、広い万博敷地内全体がお祭りさながらの雰囲気で、行ってみるだけでも十分楽しめました。もし万博に行く機会があれば、一度足を運んでみることをおすすめいたします。

大阪・関西万博の開催地は夢洲という場所です。これまでコンテナターミナルしかなかった埋立地で、万博開催にあたって大阪メトロの新駅ができたくらいなので、あまり馴染みがない場所かと思います。そんな夢洲において、ちょうど万博が開かれている横で、鋭意建設工事が進んでいる施設があるのですが、みなさまご存知でしょうか。

実を言うと、私はその施設の建設工事が順調に進んでいるか見てみたくて、ついでに万博に足を運んだくらいなのですが、現在、万博が開かれている横の土地で、日本が観光政策の一つとして進めているIR(Integrated Resort/統合型リゾート)という観光型施設が建設されています。私は、国策的なプロジェクトであるIRが進められていく中で、様々な関心や背景から、日本や各国のIR政策やビジネスとしてのIRを調査・分析しておりました。

通常、IRというと、Investor Relations(投資家対応)を思い浮かべるかと思いますが、一部界隈ではIRというとIntegrated Resort/統合型リゾートを指します。IR(統合型リゾート)は、具体的には、カジノを収益源としつつ、その周辺に劇場やイベントエリア、商業施設、ホテルなどを併設して、インバウンドを含む多くの観光客を集客しようという観光型施設です。日本にこれまでなかった施設なのでイメージしづらいのですが、シンガポールにあるMarina Bay Sands(ビルの上に船のようなものが乗っている施設)やResorts World Sentosa(ユニバーサルスタジオが一体の施設)が代表的なIRです。こういった場所には、カジノと一体の施設ということを知らずに行かれたことのある方も多いかもしれません。

カジノはギャンブルなので、日本で許認可なく設置・運営すれば明らかな犯罪行為(刑法上の賭博場開張図利罪など)ですが、2018年に成立した特定複合観光施設区域整備法(以下「IR整備法」といいます。)に基づく認定・許可を受けることで、民間の事業者が合法的にカジノを含むIRを運営することができます(細かい説明は省きますが、あくまで超大型の観光型施設の設置が目的ですので、カジノ単体の設置・運営はできません。また、設置・運営できるIR数は日本で3か所までという制限があります。)。 IR整備法は2018年に成立し、コロナ禍などの紆余曲折を経ながら、2023年に大阪府が策定した大阪IRの計画(オリックス株式会社と米国MGM Resorts International社等で構成される合弁企業が設置・運営主体です。)が国の認定を受け、ようやく2025年に大阪IRの建設が開始したのです。大阪IRの開業は2030年の予定とまだまだ先なのですが、大阪・関西万博の関西圏での盛り上がりをみると、2030年の大阪IR開業でもまた盛り上がるのではないかと、とても期待しております。

もちろんカジノは負の側面も否定できませんが、依存症対策など、既存のギャンブル産業とは比較にならないほど徹底した対策をとって進められています。IRは、インバウンドを含む多くの観光客を集客し、日本でより多くの消費をしてもらうために設置するもので、現在の日本の国情にあったプロジェクトです。2030年の大阪IRの開業後は、大阪・関西万博のように大きく盛り上がることを願ってやみません。


・本ニュースレターは、クライアントの皆様への一般的な情報提供を目的とするもので、法的アドバイスを提供するものではありません。個別案件については当事務所の中田弁護士あるいは水落弁護士までご相談ください。
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