2023年2月15日 日比谷中田 M&Aニュースレター Vol.24 (2023年2月号)
お知らせ
2023年2月1日、山崎真理弁護士が入所いたしました。
当事務所弁護士が講師を務めるセミナー情報です。
事務所主催セミナー
『企業価値評価の仕組み、買収価格の算定・アーンアウト・交渉のポイント、買収契約書での価格調整条項』
【開催日時】2023年3月8日(水) 13:00~14:30
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】Webinarに申し込む
『企業買収時のPMIの多様化とCase Study』
【開催日時】2023年4月19日(水) 13:00~14:30
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】近日HPで案内予定
外部セミナー
企業研究会主催『事業会社による国内・海外でのベンチャー出資の実務』
【開催日時】2023年2月16日(木) 14:00~17:00
【開催形式】会場開催/WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】有料 (事前登録制)
【講師】関口尊成 弁護士
【申込】セミナーに申し込む
日本取締役協会主催『進歩するM&Aに対応した会社経営 連続セミナー (第5回)』
【開催日時】2023年2月17日(金) 15:00~16:30
【開催形式】会場開催/WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加対象】日本取締役協会の会員企業のみ参加申込可能
【ゲストスピーカー】フーリハン・ローキー株式会社 マネージング・ディレクター 山崎洋一 氏
【パネリスト】中田順夫 弁護士
【コーディネーター】水落一隆 弁護士
【トピック】日本企業による複数の国々にわたる一部事業の一括売却(カーブアウト案件) - その経営判断と実務
最近の関与案件
郵船ロジスティックス株式会社によるベルギーのPierre Groupの買収について、中田順夫弁護士が関係各国でのmerger control filingの要否検討に関する郵船ロジスティックス株式会社のカウンセルを務めました。
詳細を見る
Hikari Acquisition 株式会社、Nippon Active Value Fund、Michael 1925 LLC による株式会社T&K TOKAの普通株式の一部に対する公開買付について、中田順夫、水落一隆、太田香、春山理沙の各弁護士が公開買付者3社のカウンセルを務めました。
詳細を見る
株式会社大林組による株式会社サイプレス・スナダヤとの資本提携について、関口尊成、名古屋秀幸の各弁護士が株式会社大林組のカウンセルを務めました。
詳細を見る
コムチュア株式会社によるタクトシステムズ株式会社及びタクトビジネスソフト株式会社の株式取得について、関口尊成、名古屋秀幸の各弁護士が売主のカウンセルを務めました。
詳細を見る
マツダ株式会社による株式会社今仙電機製作所との合弁会社設立および株式会社オンド、広島アルミニウム工業株式会社、株式会社ヒロテックとの合弁会社設立について、井上俊介弁護士がマツダ株式会社のカウンセルを務めました。
詳細を見る
株式会社ジャックス、ジャックスリース株式会社、三菱オートリース株式会社の資本業務提携について、井上俊介、太田香の各弁護士が株式会社ジャックスのカウンセルを務めました。
詳細を見る
現在継続中のM&A/JV案件 アメリカ2件、イギリス1件、ドイツ1件、イタリア1件、スペイン1件、メキシコ2件、中国1件、インドネシア1件、シンガポール3件、ベトナム2件、タイ2件、グローバル2件、国内21件など多数進行中。
最新トピック
『EU外国補助金規則(Foreign Subsidies Regulation)の日本企業によるM&Aへの影響と対応』
文責 井上俊介
1 はじめに
最近の海外M&Aにおける最も重要な動きの一つが、今年1月に発効したEUの外国補助金規則(FSR: Foreign Subsidies Regulation(*))です。FSRはEU域内でM&Aを行う日本企業にも大きな影響がありうるため、本稿では、特にM&Aに関して押さえておくべきポイントをごく簡単にご紹介します。
* 正式名称はRegulation (EU) 2022/2560 of the European Parliament and of the Council of 14 December 2022 on foreign subsidies distorting the internal market
2 FSRのポイント
FSRは、EU非加盟国から一定の「資金的貢献」(financial contributions)を受けている企業がEU域内で大規模なM&Aを行おうとする場合に、欧州委員会への事前届出を義務付けています。事前届出制度は今年10月から適用開始予定であり、現在、実施規則の草案がパブリックコメントに付されています。
3 事前届出が必要となる取引
(1)対象取引
届出の対象となるM&A取引はEU企業結合届出とほぼ同じで、合併、支配権の取得およびfull-functionジョイント・ベンチャーの組成とされています。
(2)届出基準
上記の取引が以下の両方の要件を満たす場合に事前届出が求められます。
①売上高基準
合併当事者、買収対象会社またはジョイント・ベンチャー(JV)がEU域内に設立され、EU域内における売上高が5億ユーロ以上であること
②資金的貢献基準
取引当事者(買収者、買収対象会社、合併当事者、JV、JV設立当事者)が、契約締結、公開買付公告または支配権の取得の前3年間において、第三国から合計5000万ユーロ以上の「資金的貢献」を受けていること
この「資金的貢献」は、非常に広く定義されており、資本注入、交付金・補助金、融資、融資保証、財政的インセンティブの付与、営業損失の相殺、公的機関による財務的負担の補償、債務免除、DES、リスケジューリングなどの資金または債務の移転だけでなく、免税措置や十分な対価を伴わない特別・排他的な権利の付与などの本来支払われるべき歳入の放棄、製品・サービスの提供・購入も含まれるとされています。
また、資金的貢献を行う主体である「第三国」は、中央政府およびその他のレベルの政府機関だけでなく、公的主体や私的主体であってその行為を外国政府に帰属させられるものも含まれるとされています。これによれば、政府系金融機関や政府系ファンドも含まれる可能性があります。
さらに、資金的貢献を受ける「取引当事者」は、グループ単位で判断され、対象となる取引との関係は問われません。したがって、取引と無関係のグループ会社が外国で受けている補助金も計算に入れる必要があります。
4 届出手続
届出手続は企業結合届出と類似しており、25営業日のPhase 1審査と90営業日のPhase 2審査が用意されています。当事者は審査期間中、クリアランスが得られるまで取引の実行を禁止されます。届出書の記載事項としては、取引の概要、資金的援助に関する情報および市場歪曲効果(distortive effects)に関する説明が求められる予定です。
5 日本企業への影響
EUでは元々、国家補助(State aid)規制によりEU加盟国が事業者に対しEU域内での競争を歪めるような補助を与えることが禁止されています。そのような中、EU加盟国以外の国家の支援を受けた企業がEU域内に参入することで、EU企業がアンフェアな競争を強いられるのを防ぐというのがFSRの建前です。念頭に置かれているのは中国系企業と目されていますが、規定上は、国による適用除外などはないため、日本企業にも適用され、違反があれば摘発・制裁の対象となる可能性があります。
EU企業結合届出では、取引当事者の売上高という比較的明確で収集しやすい基準が用いられていましたが、FSR届出では、売上高基準に加えて、資金的貢献基準という計算が困難な基準が定められているため、特に制度導入初期は届出要否の判断に時間がかかることが予想されます。EUでの大規模M&Aを行う可能性のある企業では、何が資金的貢献に当たるかを把握した上で、必要な時に過去3年間の資金的貢献の額を速やかに計算できるよう、グループ会社が受けた資金的貢献を記録、整理、一元化しておくことが有用と思われます。また、DDにおいても、今後は買収対象会社が資金的貢献を受けていないかをチェックする必要があるでしょう。
趣味紹介
『私の趣味』
文責 辻裏光希
趣味という定義からは外れてしまうかもしれませんが、単に好きなものとして挙げるならば、例えば、「海外との繋がり」がありそうです。今まで40か国近くは訪れたかと思うのですが、ここでは、昨年まで1年半ほど滞在していたメキシコについてお話ししたいと思います。
家庭の都合で巡ってきたメキシコシティでの生活。やはり海外での生活というだけあり、文化の違い、そしてそこから得た気づきや学びを興味深く感じました。
ひたすらに陽気なラテンの国かと思えば、実際は、そうとは言い切れません。メキシコでは、自分からはなるべくNOと言わないという文化があるとのことです。例えば、メキシコ人と会う約束をしている場合、彼らがそれを失念していてこちらから連絡を取ったとしても、謝ってリスケをする等の対応が得られることはまずなかったように思います。今向かっているところだなどと言い、しかし実際には、今しがたの連絡によって思い出したのでしばらく現れない、といった現象がよく起こりました。
これは、スペインによる征服に端を発し、その後も革命などにより頻繁に支配者が替わったが故に、自らの態度を曖昧にしつつ常に支配者側の顔色を窺わざるを得なかったという歴史的事情も根底にあるようで、一種の文化として根付いているようでした。日本人としては、海外に行った際に約束を守ってもらえないという不満や文化の違いに関する話はよく聞かれるところではありますが、単にルーズなだけではない事情も垣間見たように思えました。「海外は日本よりルーズである」などとひとくくりにすることは言語道断、各国の文化や歴史の違いも多様であり興味深いものだと実感できた瞬間でした。
さて、メキシコ国内のありとあらゆる遺跡や観光地を巡った経験から、同国の魅力や楽しかった思い出は無際限に語ることが可能ですが、紙幅の都合上割愛させていただきます。それよりも、「海外との繋がり」といった漠然としていて一見特徴のなさそうな趣味をなぜピックアップしたのか、なぜそれが私にとって意味を成すのか、ということの根幹には、実は10代の頃までは徹底的な海外嫌いであったという理由があります。
清潔で生活必需品に困ることもほとんどない日本の生活は唯一無二と感じていたことで、学生時代は家族に連れられて行く海外旅行は毎回苦痛であり、一生涯日本で暮らしていくことを固く心に誓っていました。そのような超が付くほどの国内志向が転換期を迎えたのは大学生の時であり、自分の限界を感じ、不得手なことに挑戦して殻を破らなければ引っ込み思案な自分を変えることができないと、短期留学に繰り出してからでした。そこから、少しずつ挑戦を重ね、長年をかけて海外への興味を育んできた結果、今に至ります。
したがって、私の趣味、又は好きなものの基準というのは、単なる好きという点のみならず、そのような「振れ幅」に依拠するような気が致します。単純に好きであるないし最近注目しているという観点で話をすれば、ナチュラルワインや生け花などについて、付け焼刃の知識を披露することは可能かもしれません。しかし、あまり有益な話をできる自信がありませんので、ストーリー性を重視して執筆を続けたいと思います。
次の切り口は、マラソンです。それまでマラソンというものは、運動能力に優れた一部の者が好んでするスポーツであり、運動が決して得意なわけでも、継続的に運動をしているわけでもない自分には、一生縁のないものと考えていました。数年前に初めて出場したフルマラソンも、特に自分の意志で出たいと思ったわけではなく、単に誘われたから、という安直な理由でしかありません。しかし、幸か不幸か、より短距離の大会の出場経験がないことが怖いもの知らずに繋がり、いきなりの42.195kmの出走となりました。当然、歩きも交えながらのゴールでしたが、辛さと達成感が入り混じった、今までに感じたことのない不思議な感覚でした。
その後、一時は自らレースに申し込み、マラソンを走るために地方遠征をしたこともほんの僅かにありましたが、元来のランニング嫌いと運動神経のなさ、それらとマラソン大会当日の高揚の記憶が綱引きし、現在では好きと嫌いの狭間にいます。成り行きでの出場経験は、フルマラソンは計3回、ハーフや10km、トレイルラン(山を走るレース)を合わせると、10回を優に超えそうです。
一番記憶に残っているのは、スタートから僅か1km地点で、前月のトレイルランで痛めた脚が疼き、残りの41kmを片脚を引きずって小走りしながら何とかゴールにたどり着いたメキシコシティマラソンでしょうか。終了直後は痛みと辛さでもう二度とマラソンは走るまいと誓いつつ、時間が経つと不思議なもので、記憶は徐々に美化されるようです。マラソンについては、このように複雑な感情が渦巻き、距離を置いたりまた少し走ってみたりといったことを繰り返しているところですが、上述の通り、葛藤を経ながら「好き」を醸成する私です。いつか大きな大会を颯爽と走り満喫しているのか、はたまた苦手意識が勝利し決別しているのか、自分自身でも正直なところ全く予測不能のため、興味深く見守っていきたいと思います。
本ニュースレターは、クライアントの皆様への一般的な情報提供を目的とするもので、法的アドバイスを提供するものではありません。個別案件については当事務所の弁護士までご相談ください。
中田 順夫 代表パートナー
直通 03-5532-3110
nobuo.nakata@hibiya-nakata.com
水落 一隆 パートナー
直通 03-5532-3109
kazutaka.mizuochi@hibiya-nakata.com
配信停止、新規配信、その他のお問い合わせはnewsletter@hibiya-nakata.com まで。