2024年11月14日 日比谷中田 M&Aニュースレター Vol.31 (2024年11月号)
お知らせ
事務所主催セミナー
『海外事業売却・カーブアウト案件、成功のための実務』
【開催日時】2024年11月27日(水) 13:00~14:30
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【申込締切】2024年11月26日(火) 12:00まで
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】Webinarに申し込む
『企業価値評価の仕組みと買収価格調整』
【開催日時】2025年1月29日(水) 13:00~14:00
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】近日HPで案内予定
外部セミナー
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】有料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】Webinarに申し込む
レコフデータ主催『M&Aリーダーシップ・プログラム』
【開催日時】
[1コマ目] 2024年12月10日(火) 15:30~17:00
[2コマ目] 2024年12月12日(木) 15:30~17:00
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】有料 (事前登録制)
【講師】関口尊成 弁護士
【申込】Webinarに申し込む
最近の関与案件
詳細を見る
トヨタ自動車株式会社によるJapan Hydrogen Fundに対する出資について、井上俊介弁護士がトヨタ自動車株式会社のカウンセルを務めました。
詳細を見る
現在継続中のM&A/JV案件アメリカ5件、ドイツ1件、メキシコ1件、チリ1件、チェコ共和国1件、インド3件、中国2件、タイ3件、インドネシア2件、マレーシア1件、シンガポール2件、グローバル1件、国内14件など多数進行中。
最新トピック
『社外取締役による取締役会におけるM&A案件への効果的なガバナンスの発揮の仕方』
文責 中田順夫
『社外取締役による取締役会におけるM&A案件への効果的なガバナンスの発揮の仕方』
文責 中田順夫
1.はじめに
2.問題の所在と解決方法
なお、一般にM&A案件という場合には会社の買収と売却の両者が含まれますが、本書の中ではM&A案件という場合には原則買収案件を指すものとし、売却案件については特にその旨を明示いたします。
3.経営戦略の観点からのチェック
そのためにも、現状の会社ビジネスを、①成長領域の重点ニュー・ビジネス(次世代のコア・ビジネスとして育てていくことを企図している戦略的ニュー・ビジネス)、②コア・ビジネス(会社の従前からの中心的な本業)、③シード・ビジネス(まだ①にまでなっていないが、近い将来①に育てることを目指して、戦略的に投資しているビジネス)、④ノンコア・ビジネス(かつては中心的な本業の一部であったが、時代の流れとともに、戦略的観点から重要性が失われつつあるビジネス)、⑤低収益・低成長事業(ノンコア・ビジネスの中でも、特に利益率が低く、今後の成長も見込めないビジネス)、⑥不採算事業(業績が悪化して、赤字を計上しているビジネス)に整理分類し、提案されたM&A案件の買収対象会社がそのいずれに該当するのか、明確にその位置づけを確認した上で議論することが重要となります。当然ながら取締役会に提案されるM&A案件の買収対象会社は、①と③が中心となり、一部コア・ビジネスの強化・補強を目指した②になり、売却案件の対象会社は、⑥が喫緊の最優先課題で、④と⑤は対象会社の業況の推移を横目で見ながら、有利な条件での売却チャンスをうかがうということになります。
従前からのしがらみやお付き合いを理由に、①②③以外のビジネスの会社の買収が提案される場合には、社外取締役としては取締役会を通じて、それによるマイナスを大きく上回る継続的なメリットが確認できない限り、断固として反対すべしということになります。特に、昔よく見られた救済合併や救済買収は、不採算事業を抱えることになりますので、よほどの合理的な正当化理由がない限り、実行は難しいように思われます。また、上場会社でもオーナー創業者が中心となって経営している会社では、しばしばとってつけたかのような飛び地になるようなビジネスの会社の買収がオーナー創業者の直感と一存により企図されることがありますが、買収対象会社がたとえ業績好調な成長ビジネスの会社であっても、またオーナー創業者の直感によって過去成功してきたことが多い場合でも、株式市場に表明・開示されてきている会社としての基本的な事業戦略に沿い資するものでない限りは、社外取締役は取締役会を通じてブレーキをかけ、承認されるべきではない理由を明確に指摘すべきことになります。
この経営戦略の観点からのチェックに関しましては、社外取締役が他社での自身の経験を通じてたまたま有している知見を、取締役会を通じてフィードバックするのも、社外取締役に期待される一つの重要な役割ということになります。社外取締役の専門領域のマトリックスが作成され株式市場へ開示されるのも、社外取締役のこの側面に期待してのことかと思われます。私のようなM&A専門弁護士のように毎年10-20件のM&A案件をアドバイスするわけではないにしても、自社のM&A案件を役員として実際に担当する場合には、その結果について直接コミットするという点において、経営者の方が弁護士その他の外部専門家より深く広く当該M&A案件に関与しますので、その経験からの指摘は大変貴重です。たとえば、買収の目的・狙い、買収後の事業計画や期待シナジーへの波乱要因を指摘し、その防止策を提案するというのが、典型的な一例です。より具体的に例をあげますと、ドイツのA社の買収により、ヨーロッパ一円での販売網を有するA社のビジネスを獲得できる場合に、それと合わせて、A社製品と同種・類似の自社製品をその販売網を通じてヨーロッパで販売拡大することが可能になり、またA 社製品を日本やアジアでの自社販売網に乗せることによりこれら地域でのA社製品の売上げ拡大を図ることができますので、それをA社買収に当たって期待できるシナジーとして認識されることになります。その際、外部のアドバイザーは、ともすればこのような販売拡大予想金額を単純にたし合わせて、当該M&A案件によるシナジーとして金額算定してきます。しかしながら、ビジネスの現実としては、ヨーロッパで自社製品の売上が伸びるにつれて、ともすれば同マーケットでのA社製品の売上が落ち、日本やアジアでA社製品の販売が拡大すると、それと同種・類似の自社製品の売上が鈍化し減ることになりがちです。このような逆シナジーの現実は、過去同様なシナジーを期待しながら、想定していたほどのシナジーを享受できなかったM&A案件を実際に担当し経験した役員にしかわからない盲点ですので、このような観点からの指摘は大変貴重な貢献となります。
続きを読む
趣味紹介
『将棋とAI』
文責 井上俊介
『将棋とAI』
文責 井上俊介
最近、将棋を始めました。きっかけは『バンオウ』というマンガで、これは、将棋の魅力に取りつかれ、300年間将棋の腕を磨いてきた吸血鬼がプロの竜王戦に挑戦する、といういかにも荒唐無稽な筋立ての話なのですが、いざ読み始めると、将棋にひたむきに打ち込む主人公に心惹かれます。それで、「将棋とは300年も飽きずに熱中できるものなのか」と素直に感心して、駒の動かし方も覚束ないところから将棋アプリで勉強し始めたところ、その面白さ、奥深さに触れたという次第です。
ただし、残念ながら才能はなかったようで、自分が指す方はまるでだめで、上達の兆しもないので、最近はもっぱらプロの試合を観戦しています(観戦主体のファンを「観る将」と呼ぶそうですが、まさにそれです)。目下、藤井聡太竜王と佐々木勇気八段の竜王戦が佳境で、対局のある日は仕事の合間に中継を見ては手に汗を握っています。並行して西山朋佳女流三段のプロ編入試験も行われており、こちらも目が離せません。
私のような素人が将棋中継を楽しめるのは、ひとえにAIのおかげです。将棋中継というと、盤を挟んで棋士が難しい顔で長考する画面が延々続き、どちらが勝っているのか負けているのか、さっぱりわからないというイメージでしたが、最近の中継では、画面にAIの評価値が表示され、どちらがどのくらい優勢かが一目でわかる上、AIの予想する最善手も示してくれるという親切さで、新規参入の敷居を下げてくれています。
AIはこのようにファンのすそ野を広げるのに一役買っている一方、藤井聡太竜王名人をはじめ、トップ棋士たちも日々の研究にAIを活用しているとのことで、将棋はAIをうまく取り入れた分野の一つといえそうです。羽織・袴で畳の上で行われる伝統文化が先進テクノロジーにいち早く馴染んでいるように見える姿には、名状し難い趣を覚えます。
もっとも、当のAIの方は、まさしくジョン・サールのいう「中国語の部屋」のように、一定の指し手に対して一定のアルゴリズムに従って一定の手を返しているだけで、勝敗に一喜一憂するどころか、自分が何をしているのかさえよくわかっていないフシがあります。このようなAIの人間味のなさ、味気無さは、翻って人間同士の将棋が多くのファンを引き付けてやまない理由をよく説明しているように感じます。
Chat GPTをはじめとする対話型AIでも事情は同じで、彼らの出力する文章は、どうにも「AI臭い」と感じる人も多いと思います。他方で、最近読んだ「チャットGPTに礼儀正しくすべきか」という記事によれば、生成AIに対する失礼な指示文は、偏りの増加や不正確な回答、回答の拒否につながる場合があるという研究があるそうで、機械と思って侮れません。私はと言えば、Chat GPTにはなるべく丁寧に接し、仕事が終わったら「いつもありがとう!」と返しています。今のところ報われている様子はありませんが、自分がそうしたいだけなのでよいということにします。なお、この文章はすべて人力で書きました。