2025年5月28日 日比谷中田 M&Aニュースレター Vol.33 (2025年5月号)

お知らせ
事務所主催セミナー
『日本の上場会社M&Aの最新トピック』
【開催日時】2025年7月30日(水) 13:00~14:30
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士、辻裏光希 弁護士
【申込】近日HPで案内予定
外部セミナー
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】井上俊介 弁護士、春山莉沙 弁護士
【申込】Webinarに申し込む
最近の関与案件
コニカミノルタ株式会社によるドイツの上場会社MOBOTIX AGの65%株式売却について、中田順夫、太田香、辻裏光希の各弁護士がコニカミノルタ株式会社のカウンセルを務めました。
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コニカミノルタ株式会社によるマーケティング・プリント・マネジメント・サービス事業のグローバルでのカーブアウト(同事業担当の欧州・アジアパシフィック・北米の子会社の一括売却)について、中田順夫、関口尊成、辻裏光希の各弁護士がコニカミノルタ株式会社のカウンセルを務めました。
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株式会社大林組の会社分割による大林伊豆熱川別荘地に係る別荘地管理事業の株式会社エンゼルフォレストリゾートへの承継について、関口尊成、名古屋秀幸の各弁護士が株式会社大林組のカウンセルを務めました。
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エバークリーン株式会社による株式会社FUSIONおよび株式会社トライトンジャパンの事業譲渡に係る基本合意書締結について、関口尊成、木下美希の各弁護士がエバークリーン株式会社のカウンセルを務めました。
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株式会社イタミアートによる、東京ネオプリント株式会社の株式取得(完全子会社化)について、
関口尊成、名古屋秀幸、春山莉沙、栗崎雅也の各弁護士が株式会社イタミアートのカウンセルを務めました。
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東海カーボン株式会社によるLenbach Equity Opportunities III. GmbH & Co.KGへのTOKAI ERFTCARBON GmbHの株式譲渡について、関口尊成、名古屋秀幸、山崎真理、春山莉沙、栗崎雅也の各弁護士が東海カーボン株式会社のカウンセルを務めました。
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現在継続中のM&A/JV案件 アメリカ4件、ドイツ2件、インド1件、中国2件、タイ2件、インドネシア3件、シンガポール4件、台湾4件、グローバル2件、国内27件など多数進行中。
最新トピック
『危機対応 ‐ 最近の不祥事報道を契機に』
文責 太田香
『危機対応 ‐ 最近の不祥事報道を契機に』
文責 太田香
M&Aを契機に外部の目が入ると、長年対象会社において注意の払われなかった事柄についてコンプライアンス上の問題点が指摘されることがあります。分かりやすい例でいうと、法務DDにおいて、いまだに労働時間管理や残業代支払いを行っていないと豪語する会社(代表)に遭遇するなど、働き方改革がずいぶん浸透したかに思えた今もその波を全く受けずにいる会社があることに驚かされます。そのような会社は、残業代未払いにとどまらない様々な問題が放置されていることも多い印象です。
ところで、最近テレビ報道される会社不祥事案件においても、類似事案の教訓を生かせていない、又は他社が危機対応の不備につき大々的な批判を受けたにもかかわらずそのような批判を反映できていない、などと自社の前例や(他社におけるものも含めて)類似事案を引き合いに出して改善のなさを批判されることが多いように感じます。実際に、2025年3月31日に公表されたフジテレビ等に関する調査報告書には、旧ジャニーズ事務所問題を引き合いに出す言及が多く、フジテレビが重大な人権侵害リスクを経験し人権尊重の重要性は経営陣も認識すべき状況にあったにもかかわらず、過去の各事象を関連させることなくそれぞれ別個の事象と捉え教訓を学び取ることができていないなどと指摘しています。ただ、会社が対応すべき危機・不祥事は、事業遂行の中で発生する問題に限られず、従業員の会社・業務外での犯罪、顧客によるハラスメント等多種多様です。そして、実際に発生する不祥事に全く同じ事案もありませんので、他の不祥事案件を参照する際には問題とされている要素を適切に抽出できなければ、その後も教訓として生かすことはできません。
そこで、突然の事態において少しでも検討の役に立つよう、目の前の案件及び他の不祥事案件を検討する際に必要な要素から、いくつか重要なものをピックアップして整理したいと思います。
1.危機対応の目的
まず、危機対応の目的の一つに、会社のダメージ・コントロールがあります。不祥事に起因する損害を最小限に抑えようとすることは、おそらく直感的に理解できるかと思います。ただ、このダメージ・コントロールが重視されすぎると、事案の正確な把握や被害拡大の防止がないがしろにされ、適切な対応をとることができなくなります。危機対応には、被害拡大の防止や再発防止策の構築・実施といった他の重要な目的があることも強く意識することが必要です。
2.迅速な事実調査
何か問題が発覚した場合、通常判明している事実関係はごく一部に限られます。また、仮に詳細を知る従業員がいたとしてもその内容の正確性は確認しておくことが必要です。特に初動対応においては、対応方針や調査体制の検討を行うため、迅速に初期的な事実調査を行う必要があります。各種アドバイザーに対応方針を相談するにあたっても、適切な情報を提供し、都度最新の情報をアップデートしなければ的確なアドバイスを受けることはできません。最終的に適切な再発防止策を策定し、説明責任を果たして社会的信用を回復するためにも、事案解明を通じた原因の特定が不可欠となってきます。
ここで、調査体制を組む際には、調査される側に立つ者はだれかという視点が重要です。調査される側が調査チームに入ることがないよう注意を払うことは当然ですが、一定の事案解明が進んだ段階で、社内調査を継続すべきかを検討する必要も生じえます。最近よく耳にする第三者委員会は、客観的な調査に基づく対外的な説明が必要であり、また場合によっては経営陣の責任の有無が問題となるような場合など一定の要請が働く場面で、中立かつ客観的な立場から調査を行い、組織や制度の改善点を提示して再発防止策を提案するものです。
危機対応は事実関係とその目的に照らして適切な方法により実施されるべきですので、初動対応から事実関係の調査が進めば、調査体制や対応方針も柔軟に修正し対応させるべきことになります。
3.被害(拡大)防止の観点
被害防止の観点からは、ビジネスと人権というトピックにも留意が必要です。営利企業であってもその利益のみを追求することには厳しい目が向けられています。危機対応の基本的視点としても、企業がとる対策は被害の性質・重大性に適切に対応させる必要があり、こと生命身体の安全をはじめとする重大な人権が問題となった場合には、企業の積極的な対応が要請されることとなります。
ここでは、自身の法令違反、法的責任の有無だけをもって、問題の有無を判断することはできません。サプライヤーによる児童労働もビジネスと人権の問題として認識されているように、企業自身の業務・活動ではなく、また人権侵害の被害者が当該企業の従業員でないとしても対応が求められる場合があります。つまり、生命身体や重要な人権への危険を防止するにあたっては、当該企業自身が違法行為や人権侵害となるような行為を行っているかどうかは重要ではありませんし、自身の業務や製品が直接原因になっているわけではないという事実でもって被害拡大を看過してよいともなりません。このことは、2006年ころに発覚したパロマ湯沸器事件において既に明確にされています。パロマ湯沸器事件では、修理業者等が湯沸器におこなった不正改造を原因とする一酸化炭素中毒死傷事故について、会社が複数の死亡事故を把握していたにも関わらず被害拡大を防止する対応(修理業者への指導や消費者への注意喚起等)を取らなかったことなどが問題とされました。昨年2024年7月23日に公表された小林製薬の紅麹関連製品に関する調査報告書も、重大な健康被害に関する症例が報告された場合は、健康被害と自社製品摂取との関連が明らかになる前であるとしても更なる健康被害の防止に向けた対応をとるべきだったと指摘しているところです。
4.最後に
大企業が不祥事により批判を受けていても、それを我が事かのように問題点を検討して整理している人はなかなかいないと思います。しかし、いったん自社で問題が発生すると、担当者はおそらく初めての危機対応であるにもかかわらず、迅速に対応方針を決めていかなければならないという非常に困難な状況に置かれます。
ただその一方で、不祥事に同じ内容のものはあり得ませんので、過去の有名事案をすべて理解しなければ適切な対応が取れないわけでもありません。危機対応の目的が会社のダメージ・コントロール、被害拡大の防止、再発防止策の構築・実施等にあることは前述のとおりですので、過去の案件を参考にしつつ目の前の事案にとって最適と思われる対応策を都度検討することになります。
以上、最近いくつか読んだ第三者委員会の調査報告書等をもとに感じるところを書かせていただきました。ちなみに、これら危機対応の視点はM&Aにおいて問題が発覚した際にも役に立ちます。また、売主の立場からすれば、ベンダー・デュー・ディリジェンスを実施することで不祥事等への対策を事前に講じたうえで買主との交渉に臨みたいところです。
趣味紹介
『自己紹介』
文責 早川大樹
『自己紹介』
文責 早川大樹
この場をお借りし、皆様へご挨拶申し上げます。本年4月1日付けでアソシエイトとして日比谷中田法律事務所に入所致しました、早川大樹と申します。
「経歴紹介」
私は、本年3月に司法修習を終え(東京修習77期)、入所と同日に弁護士登録を致しました新卒1年目の弁護士です。小中高を千葉県で過ごし、明治大学法学部を卒業し、慶應義塾大学法科大学院を修了した後、令和5年度の司法試験に合格し、この道に進みました。
「学生時代に取り組んだこと」
高校生のときに経験した出来事をきっかけに、弁護士という職業に興味を持った私は、大学で法学部へ進み、1年生の頃から司法試験の勉強を始めました。同じ志を持つ仲間や恩師に恵まれ、3年次早期卒業という形でロースクールに進学致しました。司法試験の勉強の傍ら、日本以外の世界にも興味があったため、学部2年次には英ケンブリッジ大学に留学し、現地でイギリス法を学びました。また帰国後の3年次には、少し上達した英語力をより伸ばそうと、大学対抗交渉コンペティションという契約交渉と国際仲裁の模擬大会に英語チームとして出場し、結果は惨憺たるものでしたが、代えがたい経験を得ました。ここで事業会社の副社長という役割を担うにあたり、ビジネスのおもしろさ(と同時に難しさ)に出会い、弁護士の業務分野で最もビジネスに近しい領域として、M&Aロイヤーを目指すようになります。
進学したロースクールでは、海外からの留学生を対象としたLL.M.コースが設置されていたため、同コースの科目を相互履修したり、留学生のチューターを務めてみたりと、多様な経験を積むことができました。担当の留学生(バングラデシュの現役裁判官の方)を、最高裁判所に案内し、審理を傍聴して、必死に通訳をしたことが、今でも記憶に残っています。また当時流行の真っ只中だった新型コロナウイルスと契約の関係についてイギリス法の観点から論文を執筆した経験も、リサーチ力や多角的な考察力を養う大変よい機会となりました。
「弁護士として」
本稿を執筆している現在は、入所して2か月が経とうとしている頃で、日々、業務に追われております。学生時代の経験に助けられる場面もありますが、それ以上に真剣に仕事に取り組まれているクライアントや関係者の皆様と、法律のプロとして一緒に仕事をするに際し、力量不足を実感し壁にぶつかることも多いです。大学時代の恩師から言われた「弁護士は一生勉強し続ける職業」であることとその重要性をひしひしと感じています。
一方で、クライアントの皆様のビジネスが前に進んでいくその場面に、一当事者として関与できていることに、やりがいと嬉しさも感じております。「好きこそものの上手なれ」という言葉を私は気に入っていて、楽しむことで自分が前向きに動機付けされ、優れた結果を出すエネルギーになると考えています。
無論、仕事を楽しむためにはそれに見合った能力と努力が必要であり、そのために日々研鑽を怠ることなく、クライアントの皆様・同僚・自分自身にとって「よい仕事」ができるよう、精進して参る所存です。
これから、仕事を通じてお会いしあるいは関わりを持たせていただく皆様とのご縁を大切に、仕事の内外で多くコミュニケーションを取らせていただく中で、早いスピードでの成長を実現し、そして、その成長の結果を皆様へ還元していきたいと考えております。
何卒よろしくお願い申し上げます。