2024年8月21日 日比谷中田 M&Aニュースレター Vol.30 (2024年8月号)
お知らせ
出版/寄稿
・代表パートナー中田順夫弁護士が巻頭書を務め、関口尊成弁護士と名古屋秀幸弁護士が執筆した「M&A契約における表明保証の概要」が、商事法務出版の法律ガイドNBLのNo.1271(2024.8.1)号に紹介されました。
事務所主催セミナー
『海外国内のCDMO企業の買収のポイントと注意点』
【開催日時】2024年8月28日(水) 13:00~14:00
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【申込締切】2024年8月27日(火) 12:00まで
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】Webinarに申し込む
『企業買収時のPMIの多様化とCase Study』
【開催日時】2024年9月25日(水) 13:00~14:00
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】近日HPで案内予定
『企業価値評価の仕組み』
【開催日時】2024年10月30日(水) 13:00~14:00
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】近日HPで案内予定
最近の関与案件
現在継続中のM&A/JV案件 アメリカ5件、ドイツ1件、チェコスロバキア1件、メキシコ1件、インド3件、中国3件、台湾2件、タイ4件、インドネシア6件、マレーシア1件、シンガポール3件、ベトナム1件、グローバル1件、国内27件など多数進行中。
最新トピック
『表明保証と裁判例』
文責 関口尊成
表明保証は、契約の各当事者が、一定の時点において、一定の事項が真実かつ正確であることを相手方当事者に対して表明し、保証するものです。株式譲渡契約等、企業買収の場面で用いられる契約は、この表明保証を中心に設計されているといっても過言ではないほど、表明保証は買収等の文脈において、核となる概念だといえます。
また、こうした表明保証は、デューディリジェンス(DD)とも関係しています。つまり、表明保証は、対象会社に関しては、①設立・存続(自然人である場合は意思能力等)、②株式・潜在株式、③子会社・関連会社等、④計算書類等、⑤法令遵守、⑥資産(不動産、動産、在庫、知的財産権、債権等)、⑦契約等、⑧人事労務、⑨年金・福利厚生、⑩公租公課、⑪保険、⑫環境、⑬紛争、⑭関連当事者取引、⑮アドバイザリーフィー、⑯情報開示等についてなされます。
DDでは、同様の範囲を調査します。では、DDと表明保証とで何が相違するのかが問題になりますが、それは、買収前に問題を解決しようとするのか、買収後に問題を解決しようとするかという点です。DDは、買収前に対象会社の問題点を発見し、買収価格からの減額を含め、買収前に対応することが主眼にあります。一方、表明保証は、買収後に問題点が発覚した場合に、売主に補償(損害賠償)請求することによって、買収後に生じた予想外の損害を回避することに主眼があります。
通常、買収価格を支払う前に問題点を見つけた方が、交渉力が高くなるため、できるだけDDで問題点を発見するのが原則ですが、問題点を全て見通すのは不可能であるため、発見できなかったものを表明保証でリスクヘッジするという補完関係にあるわけです。このように、DDと表明保証は密接に結びついているため、表明保証(および当該表明保証により想定されているリスク)を理解できれば、より効果的にDDを行うことにもつながります。そして、表明保証を深く理解するためには、表明保証が争われた裁判例を研究することが有用です。
そうした問題意識から、裁判例の研究を行い、当該研究成果について、その一部を法律雑誌に連載寄稿しています(「表明保証に係る裁判例の分析・M&A実務への示唆」NBL8月号より)。当該連載中で紹介した裁判例のうち一つをここで紹介します。
東京地判平成23年7月25日 判例ID:28174083(判タ1367号170頁)(ツインツリー事件)では、「既に開示された退職金に関する税務紛争の問題を除き、ツインツリーと税務当局との間で何ら紛争又は見解の相違は生じておらず、売主の知り得る限り、そのおそれもない」という表明保証に関して争われた裁判例です。
本件では、「売主が、クロージング日前に、買主に対し、明示的に表明及び保証の違反を構成する事実を開示した上で、本件株式を譲渡した場合、売主は、買主に対し、表明保証義務を負わない」との免責条項が規定されていました(アンチサンドバッギングが明示的に記載されていました)。このため、一つの大きな争点は、買主が当該表明保証に違反する事実(対象会社の法人税の申告漏れ)を知っていたかというものになりました。
本裁判例では、売主は、買主に対し、DDの担当弁護士に対し、税務当局の課長補佐による本件での課税処分の内容に沿う発言を記載した議事録を交付していたことを重視し、いやしくもDDに携わる専門家であれば、売主の説明を受け、議事録を一読すれば、税務当局による課税処分の可能性を認識し得たとした上、売主の表明保証違反を否定しました。
本件では、当該開示を受けた弁護士は、少なくとも、税務DDを担当する税務アドバイザーに情報を共有すべきであったものの、それができなかったということだと思われます。DDは短期間で行われるため、アドバイザー間の連携等が難しい場合もありますが、他のアドバイザー(本件では税務アドバイザー)とも密に連携することの重要性が一つの教訓として示唆された事例です。
・本ニュースレターは、クライアントの皆様への一般的な情報提供を目的とするもので、法的アドバイスを提供するものではありません。個別案件については当事務所の中田弁護士あるいは水落弁護士までご相談ください。
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