お知らせ

2023年7月1日、太田香弁護士がパートナーに就任いたしました。


当事務所弁護士が講師を務めるセミナー情報です。

事務所主催セミナー

『企業価値評価の仕組み、買収価格の算定・アーンアウト・交渉のポイント、買収契約書での価格調整条項』
【開催日時】2023年8月30日(水) 13:00~14:30
【開催形式】WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加費】無料 (事前登録制)
【講師】中田順夫 弁護士
【申込】Webinarに申し込む


外部セミナー

日本取締役協会主催『進歩するM&Aに対応した会社経営 連続セミナー (第7回)』
【開催日時】2023年9月14日(木) 15:00~16:30
【開催形式】会場開催/WEB配信 (Zoom Webinar)
【参加対象】日本取締役協会の会員企業のみ参加申込可能
【ゲストスピーカー】三菱ケミカルグループ株式会社 執行役シニアバイスプレジデント チーフデジタルオフィサー 市村雄二 氏
【コーディネーター】中田順夫 弁護士
【トピック】(仮) 企業のDX変革とM&A「事業統合、MAを進めてきた三菱ケミカルグループ(MCG)のDX改革 ~日本のグローバル企業からグローバルエクセレントカンパニーへの挑戦」

日比谷中田法律事務所、AOSデータ、GVA TECHの三者共催
【開催日時】2023年9月28日(木) 午後
【開催形式】会場開催 (日経セミナールーム)/WEB配信
【講師】井上俊介 弁護士
【申込】近日HPで案内予定


最近の関与案件

三菱UFJローンビジネス株式会社を消滅会社とし三菱UFJ住宅ローン保証株式会社を存続会社とする吸収合併について、中田順夫、太田香、春山莉沙の各弁護士が両社の親会社である株式会社三菱UFJ銀行のカウンセルを務めました。
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ジャックス・ペイメント・ソリューションズ株式会社による株式会社 J&S パートナーズへの保証業務の譲渡について、井上俊介弁護士がジャックス・ペイメント・ソリューションズ株式会社のカウンセルを務めました。
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現在継続中のM&A/JV案件 アメリカ1件、イギリス1件、フィンランド1件、メキシコ1件、中国1件、台湾2件、スリランカ1件、タイ2件、インドネシア3件、マレーシア1件、シンガポール2件、ベトナム2件、グローバル1件、国内25件など多数進行中。


最新トピック

『海外投資家からみた日本の上場会社のコーポレートガバナンス』
文責 水落一隆


弊職は2020年2月から、弊事務所の業務とは関係なく個人的な業務として、海外ファンドによる日本の上場会社とのエンゲージメント活動のサポートをしています。この間多くの日本の上場会社の経営者およびIR担当者から直接お話を伺う機会がありました。また、経済産業省、東証、他の海外および国内投資家、著名なPEファンドなどの市場関係者とも頻繁に日本のコーポレートガバナンス改革などのトピックについて意見交換をさせていただいています。

先日、「取締役会の変革」と題するセミナーに参加させていただく機会がございました。同セミナーに講師として登壇された著名な日本のファンド運用者の方が、最近海外の投資家50社を回った際に聞いた話として、「我々は日本には期待していない。現在たまたま日本市場において株価が上昇しているかもしれないが、これは戦争その他のマクロ要因に基づく消去法的選択によるものであって、海外投資家による日本への期待の表れではない。日本は過去20年、日本は変わる、変わると言い続けてきたが、何も変わっていない。」という海外投資家の声を紹介されました。同講師の方は、「私はこの海外投資家の評価を聞いて大変ショックを受け、悔しい思いをした。日本は今こそ、構造的な変革を、ダイナミックにかつスピード感をもって行わなければならない。」と話されました。

日本市場では直近の2年間に限ってもコーポレートガバナンスに関して様々な動きがありました。
2021年6月:東証「コーポレートガバナンス・コード」改訂
2021年6月:金融庁「投資家と企業の対話ガイドライン」改訂
2022年4月:東証の市場構造の見直し(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場)
2022年7月:経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」改訂
2023年3月:東証によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れの上場会社に対する改善要請
2023年3月:経済産業省「攻めの経営を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-」改訂

東証によるPBR1倍割れの上場会社に対する改善要請は異例とも言われましたが、プライム市場上場会社の約半数、スタンダード市場の約6割がPBR1倍割れの状態にあり、海外の株式市場(米国約5%、欧州約24%)と比較しても日本市場の状況自体が異例と言えます。PBR1倍割れとは、時価総額(株価×株式数)が純資産(資産マイナス負債)よりも小さい状態を言い、株主からみれば、会社を清算して株主に残余財産を分配した方が得である状態と説明されます。東証は、単に損益計算書上の売上や利益水準を意識するだけでなく、資本コストや株価を意識した経営が必要と指摘しています。

アクティビストの活動も年々活発化し、今シーズン2023年3月~6月にかけて、78社に対して305議案の株主提案が提出されたと言われています。弊職がサポートする海外ファンドも10社以上に対して株主提案を行いました。

海外投資家からみた日本のコーポレートガバナンスに関する論点は多岐に亘りますが、弊職が関わった海外ファンドによる株主提案においては、2つの点を挙げています。これは同海外ファンド独自の視点に基づくものではなく、海外投資家一般の見方でもあります。
1つ目は、定款に社外取締役を過半数とする旨の規定を新設するというものです。現在コーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場会社に対し3分の1以上(その他の上場会社に対し2名以上)の独立社外取締役を選任することが要請されていますが、この社外取締役の人数を過半数とすべきとの提案になります。社外取締役には、①自らの知見に基づき会社の持続的成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る観点からの助言を行い、②経営の監督を行い、さらには③経営陣・支配株主から独立した立場で少数株主などのステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させる、という役割があります(コーポレートガバナンス・コード原則4-7)。特に、③の社外取締役は少数株主などのステークホルダーの代弁者であるという観点がこれまで余り強調されてこなかった印象があります。また、取締役会の構成員のスキルマトリクスが説明されていますが、日本の上場会社においては(管理会計とは別の意味での)財務会計のスキルが低いと言われており、公認会計士や銀行出身者ではなく、日本の上場会社の問題点である資本効率性を意識するためには、資本市場からの見方が出来る経験が取締役に求められる点も、株主提案理由に含めています。この点は前述のセミナー講師の方もくしくも同じ提言をされていました。

コーポレートガバナンスに関する株主提案の2つ目は、取締役・執行役員などの経営陣に対して金銭報酬を減らし、自社の譲渡制限付株式報酬をもっと付与すべきというものです。理由は単純で、経営陣が自社の株式を多く保有すれば、経営陣の目線が株主と同じになり、経営陣が企業価値の向上、資本効率の向上、ひいては株価の向上について、株主と同レベルの「真剣さ」を持つようになると考えられるからです。これは行動経済学に基づく考え方で、欧米では当然と考えられています。先の経済産業省の「攻めの経営を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-」においても、欧米の上場会社で導入されている株式保有ガイドラインでは、CEOは在任中年間基本報酬の3倍から5倍の株式を継続保有することが求められていると紹介されています。ポイント付与制の信託型株式報酬制度を導入されている会社もありますが、海外投資家にとって投資判断上重要なのは、取締役が在任中にそれぞれ自社株式を何株保有しているかという情報であり、この点信託型株式報酬制度は海外投資家に評価されにくいという点が問題となります。

弊職がサポートする海外ファンドによる株主提案を受け、譲渡制限付株式報酬制度を導入された投資先企業は多くあります(インテージホールディングス、石原ケミカル他)。取締役会の構成については、上記資本市場からの見方が出来る財務担当取締役の選任や女性取締役の選任・増員(海外では取締役会の男女構成比は50:50を要請する流れになっています)についてはまだこれからといったところですが、社外取締役の役割への理解が進むとともに、実効性ある取締役会の在り方について、多くの上場会社において議論が進められているものと理解しています。

今後も海外投資家と上場会社の経営者・社外取締役との対話が一層深化し、これまでの上場会社の経営のやり方に変革が生じ、上場会社の企業価値が持続的に向上し、ひいては海外投資家に「期待される」日本の株式市場となることを切に願っています。弊職も微力ながらそのために尽力したいと考えています。



本ニュースレターは、クライアントの皆様への一般的な情報提供を目的とするもので、法的アドバイスを提供するものではありません。個別案件については当事務所の弁護士までご相談ください。

中田 順夫 代表パートナー
直通 03-5532-3110
nobuo.nakata@hibiya-nakata.com

水落 一隆 パートナー
直通 03-5532-3109
kazutaka.mizuochi@hibiya-nakata.com

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